認知症の人をどれだけ理解しているか-パーソンセンタードケアとは
目の前の認知症の人とコミュニケーションをとる必要性があるとき、どう接したらよいか迷われることがあると思います。接し方の方法の情報は数多く目にしますが、では実際の場で自信を持って接することができるかというと大変戸惑うと思います。
そこで接し方というノウハウ的な情報を理解する前に、認知症の人を、病人としてだけでなく、人として理解していくことが重要であるという理解が極めて重要なのです。ノウハウをどんなに理解しても、認知症の方を“人”として理解するというこころがなければ、うまくいきません。つまり、接する方法の前に、接するこころのありかたを考えるという視点が大切となります。その場合、“パーソンセンタードケア”という考え方が参考になります。
● パーソンセンタードケアとは、一人の人として尊重するケアを重視すること
1980年代末にイギリスの臨床心理学者のトム・キットウッド氏によって提唱された、認知症をもつ人を一人の”人“として尊重し、その人の立場に立って行う認知症ケアの考え方の一つです。
つまり、目の前の認知症をもつ人々の行動や状態は、認知症の原因となる疾患のみに影響されているのではなく、その他の要因との相互作用であるという考えを提唱しました。
その他の要因とは、・性格傾向(性格傾向・対処スタイルなど)、・生活歴(成育歴、職歴、趣味など)、・健康状態、感覚機能(既往歴、現在の体調、視力・聴力など)、・その人を取り囲む社会心理(周囲の人の認識、環境など)が指摘されています
例えば、元々主婦だった女性が家に帰りたがるのは、食事の準備が気になるという生活習慣の影響があるかもしれないということです。
●医療と社会福祉における対処の違いを次のように理解することもできます。
医療の場合は、「病理学的疾病体系」に則し、“病気だけをみて、病人をみない”という傾向に陥りやすく、社会福祉の場合は、対象者を総合的に判断し、その人の生活を総体的にとらえる、つまり“その人間の生活を総体的に捉える”という傾向が見られると指摘する専門家もいます。
特に認知症の人の場合は、医療的見地からの対応では、薬漬けにもなりやすく、病人としてだけでなく、一人の生活する人格を持った人間として対応していくべきであるとする、という考え方です。詳しく知りたい人は、現場からの報告としての、村瀬孝生・東田勉著「認知症をつくっているのは誰か~「よりあい」に学ぶ認知症を病気にしない暮らし~」(SBクルエイティブ株式会社)という著書を是非手に取ってもらいたいと思います。
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